監修者:河井恵美さん(助産師・看護師)
近年、ルイボスティーは健康や美容に良い影響を与えるとして、注目されています。ルイボスティーの効果は、妊活やアンチエイジングなど女性向けのメリットが多く取りざたされていますが、赤ちゃんの健康にとってもプラスとなるのはご存知ですか?この記事では、ルイボスティーが赤ちゃんに与えるメリット・デメリットを紹介しますので、赤ちゃんの悩みを解決できるかチェックしてみてください。また、後半では赤ちゃんに飲ませたいルイボスティーの種類も紹介します。
目次
赤ちゃんにルイボスティーを飲ませるときのリスクや注意点とは?
ルイボスティーは、ルイボス(Aspalathus lineari)を乾燥させて煎じたハーブティーです。近年、急に知名度が上がったため、赤ちゃんにとって安全なのかご存知ない方が多いかと思います。ここでは、赤ちゃんにルイボスティーを飲ませるときに気をつけるべき点をご紹介します。
1.ミネラル過多による下痢
ルイボスティーは、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、鉄分、亜鉛など多くのミネラルを含んでいます。赤ちゃんにとってミネラルは必須ですが、大人よりも必要量が少なくなっています。例えば、0〜5ヶ月齢の赤ちゃんに必要なマグネシウムは20mg/日ですが、18〜29歳の女性は230mg/日です。ミネラルは、赤ちゃんの未発達な腸では分解できないため、過度に摂取すると下痢を引き起こします。また、過多のミネラルは腎機能にも負担が与えます。そのため、ルイボスティーを赤ちゃんに与える際は、他の食事に含まれるミネラルとバランスを取る必要があるでしょう。
また、ルイボスティーを抽出する際に、ミネラルウォーターを使用する場合もあるかと思います。しかし、赤ちゃんの体にとって、ミネラルウォーターのミネラル分は過剰であることが多いです。特に、硬水は大人でも体に合わない方がいるほどミネラルが多いので、ルイボスティーを抽出する際は、水にも気をつける必要があります。
参考文献1:日本SOD研究会
参考文献2:日本人の食事摂取基準(2015年度版)の概要
参考文献3:調乳指導に軟水 クリスタルカイザー
2.タンニン過多による便秘
ルイボスティーには、苦味や渋みの元となる「タンニン」が含まれています。タンニンは収斂作用を有し、過剰に摂取するとたんぱく質を凝固させて便秘を引き起こすことがあります。ルイボスティーは、緑茶やウーロン茶と比較すると低タンニンですが、元々便秘がちな赤ちゃんの場合は、量に気をつけて飲ませることが望ましいです。ただし、赤ちゃんは他の要因でも便秘になるため、ルイボスティーを飲ませたことが原因で便秘になったのかどうか、冷静に判断する必要があります。
参考文献1:ルイボスティー
参考文献2:日本文化に根付いた柿渋の科学
3.やけど
ルイボスティーは、ティーバッグを熱湯に3〜5分浸して抽出します。また、鍋で水を沸騰させた後、茶葉を入れ、弱火で10分ほど煮出すことでも抽出できます。これらの方法で作ったルイボスティーはとても熱く、赤ちゃんの舌や口にやけどができてしまう恐れがあります。赤ちゃんにルイボスティーを与える際は、よく冷ました方がよいでしょう。
参考文献:ルピシア 入れ方の目安
4.消化不良による下痢
ルイボスは、ルイボスティーを抽出した後、料理やお菓子に再利用することができます。しかし、赤ちゃんにとって茶葉の摂取はあまり望ましくありません。赤ちゃんの腸は、生後6〜10ヶ月で成人と同じ状態へ近づきます。ただし、2歳までは食べ物を消化する力が弱く、摂取したものが未消化で排出されてしまうことがあります。特に、ほうれん草などの葉物野菜は、食物繊維が多く消化しづらいことがわかっています。ルイボスの葉にも、食物繊維が含まれているため、同様のことが言えます。ルイボスティーを赤ちゃんに与える際は、茶葉を茶こしで回収することを忘れないようにすると消化不良を防げます。
参考文献:赤ちゃん&子育てインフォ うんちの気になることQ&A集
ルイボスティーが赤ちゃんにもたらすメリット4選
ここまで、ルイボスティーのデメリットを紹介しました。しかし、赤ちゃんにルイボスティーを与えるメリットはたくさんありますので、以下の内容を確認してください。
1.ミネラルを摂取できる
ルイボスティーには、カルシウムや鉄分など多くのミネラルが含まれています。カルシウムは、生体内に最も多く含まれるミネラルであり、主に骨や歯の構成成分として働いています。カルシウムは、母乳(100g中27mg)や人工乳(100g中380mg)に多く含まれています。また、鉄分は血液中のヘモグロビンの構成成分として、酸素運搬という役割を果たしています。鉄分は生後6ヶ月から3.5mg/日以上必要とされ、男児は5.0mg/日、女児は4.5mg/日摂取することが推奨されています。
しかし、離乳すると小魚などからカルシウムや鉄分を摂取する必要があります。例えば、しらす干しには、100g中にカルシウム210mg、鉄分0.6mgが含まれています。しらす干しは大人の一食分が25gなので、赤ちゃんに食事だけで十分量のカルシウムや鉄分を与えることはとても難しいです。その点、ルイボスティーは、水分補給とともにミネラル補給もできるため、食事と併用して赤ちゃんのミネラル摂取をサポートできます。
参考文献1:公益財団法人長寿科学振興財団 カルシウムの働きと1日の摂取量
参考文献2:食品標準成分表 人乳
参考文献3:森永乳業 妊娠・育児情報サイト はぐくみ
参考文献4:公益財団法人長寿科学振興財団 ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量
参考文献5:食品成分データベース しらす干し/微乾燥品
参考文献6:中田遊亀商店 しらす・ちりめんじゃこ「100g」ってどのくらい?
2.アレルギー症状を和らげる
ルイボスティーには、ビタミン類やセレニウムなど豊富な抗酸化成分が含まれています。特に、セレニウムは、生体内の抗酸化酵素の働きを助ける作用を有し、妊娠中のお母さんの摂取も厚生労働省から推奨されています。
赤ちゃんの病気として、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎(ぜんそく)があります。これらの病気の原因の一端として、体内の抗酸化物質を高める力が弱いというものがあります。そのため、ルイボスティーを摂取することで、元から持つ抗酸化力を高め、アレルギー症状を緩和する効果が期待できます。
参考文献1:妊婦・授乳婦 厚生労働省
参考文献2:日本抗酸化 アトピー性皮膚炎、アレルギー、ぜんそく
3.便秘を改善する
ルイボスティーには、新陳代謝を促して腸内環境を改善し、便秘を改善する効果が期待できます。さらに、血流がよくなることで、腸の血行もよくなり排便が促進されます。
赤ちゃんも大人と同様に便秘に悩まされることがあります。「下腹部が張っている」「母乳やミルクを飲む量が減っている」などの症状があれば、便秘の可能性があります。また、離乳直後の赤ちゃんは、水分不足のため便が硬くなり、便秘になってしまいます。ルイボスティーを摂取することで、水分補給や穏やかな整腸作用が期待でき、赤ちゃんの便秘を改善できる可能性があります。
参考文献1:nono ルイボスティーダイエットの効果とやり方のご紹介
参考文献2:エリエール 赤ちゃんの便秘
4.肌を健康に保つ
ルイボスティーは飲むだけでなく、「化粧水」としても使用できます。前述の通り、ルイボスティーには抗酸化作用があり、皮膚の状態を健康に保ってくれます。より、強い効果を得たい場合、ルイボスティーを染み込ませたガーゼやコットンを肌にのせたり、お風呂で入浴剤として使用したりすることで肌に直接働きかけることができます。おむつかぶれや湿疹を緩和する作用が期待できます。
また、赤ちゃんだけでなく、あかぎれなどお母さんの肌トラブルにも効果的です。お風呂で使用する際は、浴槽やバスタオルに着色する恐れがあります(茶しぶ)。ルイボスティーを使用した後は、すぐ洗浄するように努めてください。
参考文献:オーガニックルイボスティー リリース科学工業株式会社
赤ちゃんにおすすめなルイボスティーの飲ませ方をまとめてみた
どのタイミングで飲ませるのか良いか?
赤ちゃんは、出生直後から半年ほどは、母乳やミルクから水分を補給します。離乳直後からは、離乳食や他の飲み物からも水分を摂取する必要があります。そのため、離乳食を食べ始めるようになってから、ルイボスティーを与えるのが望ましいです。初めて与えるときは、スプーン一杯からはじめ、慣れてきたら量を増やしましょう。また、ルイボスティーだけでなく、白湯や麦茶など他のノンカフェインドリンクも与え、赤ちゃんの好みを把握しましょう。ルイボスティーを嫌がるようでしたら、与えるのは中止してください。
どれくらい薄めたほうが良いか?
ルイボスティーの基本的な淹れ方は、煮出すという方法で、鍋に張った水に、ティーバッグを入れて、数分間〜30分間煮出します。この煮出すタイミングで抽出時間を短くすると、赤ちゃん向きの濃さになります(30秒程度)。また、大人用に煮出したルイボスティーを赤ちゃんに与える場合、かなり薄める必要があります。最初はお湯に色がうっすら付いている程度の濃さで与え、次第に濃くしていきましょう。
また、ルイボスティーのもう一つの抽出方法として、「水出し」があります。ペットボトルや水筒に水とティーバッグを入れ、一晩放置して抽出します。この方法で作った場合、お湯で薄めることによって、ちょうど良い温度のルイボスティーができ上がります。さらに、市販されているルイボスティーの中には、インスタントの商品(粒状)もあります。お湯や水に溶かすだけで自分の好みの薄さのルイボスティーができるため、少しずつ濃さを調節したいお母さんにおすすめです。
参考文献:H&F BELX 煮出す淹れ方
ホットが良いか、アイスが良いか?
赤ちゃんにとって、熱すぎる飲み物も冷たすぎる飲み物も体に良くありません。ホットの飲み物はやけどの原因になります。また、アイスの飲み物は、お腹を冷やし下痢の原因になります。ルイボスティーの温度は、ミルクを作るときと同様に、人肌程度(37℃)のぬるさがベストです。初めて作る際は、温度計などを用いて赤ちゃんにとって適切な温度のルイボスティーを作りましょう。
赤ちゃんにおすすめなルイボスティーの種類3選
1.農薬不使用のオーガニックルイボスティー
ルイボスの栽培にあたって、農薬を使っているメーカーや農家もいます。まだ、体が小さく免疫が弱い赤ちゃんにとって、残留農薬の影響は大人以上にとても大きいです。そのため、ルイボスティーを与えるなら、無農薬の商品をおすすめします。
農薬使用の有無を確認する手段として、「有機JAS規格」があります。有機JAS規格とは、日本国内で販売する農産物および農産物加工食品に対し、安全性を約束する規格です。有機JAS認定を取得した商品は、有機JAS規格のマークが付いています。このマークが記載されていれば、確実に無農薬のルイボスティーだと判断できます。
例えば、ハーブティーの専門店「ナチュラルショップなごみ」や、ノンカフェインドリンクを扱う「H&F BELX」のルイボスティーは、有機JAS認定を取得しています。市販されているルイボスティーの中には、有機JAS認定を受けていないにも関わらず、「オーガニック」や「有機」と名乗っている商品もありますので注意してください。また、農薬使用の有無を明確に記載していない商品についても、コールセンターなどで確認できるため、不安な方は赤ちゃんにルイボスティーを与える前に調べてみてください。
参考文献1:なごみのポリシー
参考文献2:H&F BELX 水銀検査はしていますか?
2.未発酵で栄養価の高いグリーンルイボスティー
ルイボスティーには、茶葉を発酵させて作った「(レッド)ルイボスティー」と、茶葉を発酵させずに乾燥させた「グリーンルイボスティー」が存在します。それぞれ、水色(すいしょく)や風味が異なりますが、実は、栄養価にも違いがあります。
グリーンルイボスティーは、抗酸化成分の一種であるアスパラチンを多く含みます。アスパラチンの量は、レッドルイボスティーのおよそ80倍に相当し、赤ちゃん用に薄めたとしてもかなりの量を摂取することができます。グリーンルイボスティーは、通常のルイボスティーと比べて高価なことが多いです。これは、フリーズドライ製法という、特殊な機械を使用する製法によって作られているためです。ただし、赤ちゃんに与えるルイボスティーはかなり薄めたものなので、グリーンルイボスティーのコストパフォーマンスが特別悪いという訳ではありません。グリーンルイボスティーは各メーカーから販売されており、世界各国のお茶を扱う「LUPICIA(ルピシア)」や、コストコや成城石井、KALDI(カルディ)で購入できる「CARMIEN(カーミエン)」などで取り扱われています。グリーンルイボスティーは、通常のルイボスティーと比べて酸味がまろやかなので、一度ルイボスティーを与えても飲まなかった赤ちゃんや、今までルイボスティーを苦手としていたお母さんも、ぜひ飲んでみていただきたいです。
参考文献:茶つみの里 ルイボスティーとグリーンルイボスティーの違いって?
3.赤ちゃん向けに作られたルイボスティー
通常、ルイボスティーは大人向けの効能(美肌やアンチエイジングなど)を謳って販売されています。しかし、赤ちゃんやお母さん向けに作られたルイボスティーも存在します。
例えば、「生活の木」で販売されている「Baby..の 有機ルイボスティー」は、通常のルイボスティーと比べて甘みを感じやすい茶葉を使用しています。そのため、ルイボスティー独特の風味が気になる赤ちゃんも、おいしく飲むことができます。また、「乳児用規格適用食品」という、厚生労働省が定めた、1歳未満の乳児の飲食を目的で販売される食品に対して、一般食品より低い放射性物質の基準値をクリアしています。他に、伊藤園の「ヘルシールイボスティー」も、乳児用規格適用食品として販売されています。
ルイボスティーは基本的にノンカフェインのため、赤ちゃんが飲んでも心配ありません。しかし、赤ちゃん用に作られていないルイボスティーの中には、カフェインドリンク(コーヒーやジャスミンティーなど)とブレンドしている商品や、製造の工程でカフェインが混入している商品もあります。購入する際は、栄養表示や注意事項を確認するなどして、気をつけてください。
参考文献1:生活の木 Baby..の 有機ルイボスティー ティーバッグ
参考文献2:日本経済新聞 伊藤園、ノンカフェインティー「ヘルシー ルイボスティー」を発売
本記事の監修者の紹介
本記事の監修者:河井恵美さん(助産師・看護師)
- 過去に大学病院・市民病院・個人医院に勤めた経験あり。現在はシンガポールの産婦人科クリニックで勤務。世界にいる親御さんを応援するため、「エミリオット助産院」をインターネット上で開設。